ライズを待ち続けて

東北の渓流を舞台とした釣り物語

 アメリカ旅行の道すがらフライフィッシングをしてみた

1 旅の始まり

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マサチューセッツ州の田舎町North Adams                                      

 秋にニューヨーク市へ観光旅行することになった。アメリカへ行くのは初めて。家族と一緒にもっぱら観光名所巡りになる予定なのだけど、内心ではせっかくそこまで行くのだから、どこかの川でフライフィッシングができないものかという思いが頭に浮かんでいた。ネット上で情報を探してみると、ニューヨーク市から列車で郊外に向かい数時間行けば、釣りができないこともないらしい。でも外国で釣りをするということは、フィッシングガイドを雇ってもそうは簡単なものではないことを過去に経験していた。川までに要する往復の移動時間や、気象条件によっては全く釣りにならないこともあるので、数日は見積もっておかないと、思い描いていたような釣りはできないものだ。そこまで家族を付き合わせることも単独行動を取るわけにもいかず、いったんは諦めた。 

 

そもそも旅行の目的はなにかと言えば、いったい世界の中心地と言われるニューヨークとは、どれほどのものなのだろうかと、物見遊山に出かけることである。それに何日か滞在を見込み、その後は電車でボストンまで移動し、学生の頃に世界史の授業で習ったようなアメリカの早い時代の旧跡などを見て回ろうかと計画した。この時点でボストンをあれほどの大きな都市とは知らず、車を借りて郊外へぶらっと行って見たら田舎の景色が広がるだろうと簡単に考えていた。 

「地球の歩き方」の情報から、ボストンのあるマサチューセッツ州の西部にはモホークトレイルという紅葉が美しい街道があることを知った。モホークとは、その地域に住んでいたネイティブアメリカンの部族の名前で、もともとは通商に使われていた山道であるという。西端まではボストンから一泊二日の日程でも行ける距離であった。 

そこで、地図で確かめてみると、道路はほぼ東西に一直線に伸びており、ところどころに見どころもあるようだ。それを目で追っていると、いくつかの川がトレイルを南北に横切っているのが目に留まり、その一つにDeerfield River という名の川があった。

 Deerfield River を Google検索をしてみると、すぐに川の名を冠したフライショップのウエブサイトが見つかった。川は、北隣のバーモント州から70マイル流れてコネチカット川に合流するもので、レインボートラウト、ブラウントラウト、ブルックトラウトが生息している。早瀬あり、淵あり、開きありでフライフィッシングに向いている川ということだ。その店では、フィッシングガイドも請け負っていて、料金はFull Day (6-8 Hours)が、ひとりだと$300というから、現在の通貨レートだと4.5万円。Half Day(4Hours)では$225、3.8万円だということもわかった。 

 別なウエブサイトでは、さらに詳しい情報があり、トラウトは州政府により放流されていて野生化したブラウンは20インチを上回るものも上がること、レインボーの平均サイズは12インチだが、これも18インチやそれ以上のも釣れること。川には2か所のキャッチアンドリリース区間があること。流域にはいくつかダムがあり、放流によって急に流速が変わり、ウエーディングにあたっては気をつけねばならないことなどである。 

 と、気がつけば、この見知らぬ川で釣りをすることを現実のものとして考え始めていた。