ライズを待ち続けて

東北の渓流を舞台とした釣り物語

2022-01-01から1年間の記事一覧

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 8/8

さてずいぶんと寄り道してしまったな。なんの話をしていたんだったか忘れちまったな。笑笑。そうそう、気象データを見てタカシと釣りに出かける話だったな。その年は期待していたほどではなかったがな、イワナは釣れた。面白かったのはな、タカシはブリーチ…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 7/8

その後しばらくしてからな、ワシは何年かぶりにタカシとこの川に行ったことがあった。しばらく釣り上がって一息ついていると、ワシらの後から来た二人組と会ったんだよ。彼らはワシらの足跡を辿るように釣り上り、そこで追いついたという具合だな。皆も経験…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 6/8

実はタカシがその大きなイワナを釣った閉じた沢があるところは、この川のイワナ釣り場のほんの入り口でしかないんだよ。本流の奥は深くてな、山道から杣道を経て川原に降りてからも川は延々と続いていた。地図で見ると、源流はいつかの支流に分かれていて、…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 5/8

そいつはな、ただサイズがでかいだけではなく、体色が白いイワナだった。アルビノとは違う。色が薄かったんだね。暗い谷だと思っていたんだが、実は河床には花崗岩が砕けた白い砂が堆積していたんだよ。そこに居ついていたから、環境に合わせてそんな色にな…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 4/8

それはさらに古い話でな、さっきの話からさらに30年ばかりも遡る。昭和の時代のことだよ。当時、フライフィッシングを覚えたばかりのワシは,すぐに夢中になって、あっちこっちの川へ足繁くでかけるようになった。そして楽しさを誰彼となく語り聞かせてい…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 3/8

前の年にそんないい思いをしたものでな、次の年もまたチャンスを狙っていたのだ。ところが、その年の6月の上旬は雨が続いてしまっていてな、中旬になると今度は気温が上がらなかった。天候につられてこちらの動きも鈍く、なんだかその気にならなかった。そ…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 2/8

その前の年はな、冬の間の雪が少なかった。そして春になってから急に気温が上がったんだ。だから、これは雪代水が落ちるのは早いだろうと予測したわけだ。そして、タカシに連絡して、いつもよりも一か月以上も早く一緒にその川へ行ったのだよ。タカシという…

釣り爺様の昔語り カーティスクリーク 1/8

今日はこれから皆にある川の話をしようと思う。食べながら呑みながらでも聞いていっておくれ。 30年も前の話になるがな。その頃には毎年の気候の変わりぶりが激しくなっていてなあ、冬の間に降り積もる雪の量も年によって違ってくることが多くなってきておっ…

 サクラマスの渚 2

「魚が見えるの?」 川を渡った女が、マコトたちのすぐそばまで近づいてきていた。男は口をつぐんでしまった。マコトは戸惑いながら逆に 「何かを探していたんですか。」 と問い返した。白いクロップドパンツを履いた女は、見てと言って、マコトまで歩み寄り…

 サクラマスの渚 1

目の前には初夏の日差しを浴びた海原が広がっていた。沖からは浜辺に向かって緩やかな風が吹いており、砂浜にさざ波を打ち寄せていた。そして波間には時折大きな波しぶきが跳ね上がった。浜辺の背後はすぐに切り立った崖になっていて、表面の地層を露わにし…